先生の秘密

中山の目には、力がある。

中山の言葉には、説得力がある。

中山自身には、魅力がある。

思い出にすがりついて重い荷物をなかなか下ろさない私のために、そのきっかけをたくさんくれる。

ただ誠実に。

「動いたら疲れたなー。帰ろっか」

にっこり笑った中山は、飲みきったドリンクのボトルを持ち、すっくと立ち上がる。

「うん」

彼に心を委ねてみたい気もする。

高校生は高校生らしく、クラスメイトに恋をしたり、放課後デートしたり、付き合うか付き合わないかの微妙な関係にドキドキしたり。

このちょっと甘酸っぱい感じが、本来描いていた恋愛のカタチだ。

淳一との恋愛は濃すぎた。

燃えるように焦がれて、張り裂けるほどに切なくて。

恋愛経験の乏しい自分が短期間で忘れるのは、難しい。

中山ほどの男がいつまで私に構ってくれるかはわからないけれど、私は本来のカタチを取り戻したい。

期間限定で本気の恋愛をするなんて、バカな真似をしなくていいように。

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