先生の秘密
話はすぐにまとまった。
マスコット係に報告すると、マスコットも合わせてリンゴ型のものを作ることになった。
何やら仕掛けを施すとのことなので、仕上がりが楽しみだ。
私のリンゴ型の旗という案を中心に物事が動いていく。
自分の案が通るのは、こんなにも嬉しいものだったのか。
リンゴという果物を挙げてくれた淳一に感謝しよう。
初日は設計図まででお開きとなり、翌日から本格的な製作に入った。
裁断する布の形、縫う順番。
吊るす紐をかけるためのリングを付ける位置。
遠くから見てより立体的に見える配色。
ゴールが決まったところで、まだまだ考えるべきことはたくさんある。
みんなが一丸となってリンゴを製作している。
最後の青春という感じがして、感慨深い。
私は配色を考える係を担うことになった。
スケッチブックに描いたたくさんのリンゴ型に様々なパターンで色を塗り、より立体的に見える配色を決める、大切な係だ。
作業時間はあっという間に過ぎ、作業終了時刻が近づく。
時刻を過ぎても作業をすると減点になってしまうルールだ。
「時間だね。今日はここまでにしようか」
「だね。みんなお疲れー」
私も作業の手を止める。
たくさん描かれたリンゴ。
真っ赤でポップなものや、緑っぽい部分のあるリアルなものなど、一声にリンゴといっても様々なデザインがある。
色は元美術部の男子が考えて塗ってくれたのだが、リンゴひとつでここまで塗り分けることができるのかと、クラスメイトの隠れた才能が垣間見えて感動さえする。
「すごいなぁ。全部立体的」
発案して採用はされたが、その後完全に流れに乗っているだけの私は、眺めて感心するくらいしかできない。