先生の秘密

準備で忙しない日々が続き、体育祭の前日。

私たちはようやくこの瞬間を迎えた。

「リンゴ型団旗、完成ー!」

ポップなイラストよりはリアルで、実物よりは赤さの映える、立体感を重視したリンゴの旗。

学園史上、四角形でない団旗は前例にない。

私たちは新しい歴史を刻んだのだ。

私たちの最後の仕事は、この巨大なリンゴを所定の位置……運動場側の校舎にロープで吊るし、出来栄えを確認することだ。

私は仲間と共に、運動場でリンゴ旗が吊られるのを見守った。

白組、青組、黄組の四角くてゴージャスな旗の横に並ぶ、どでかいリンゴ。

吊っても形が保たれるよう、吊り紐を取り付ける位置を工夫したり、裏に骨を仕込んだりした。

頑丈な素材は重くて使えなかったため強度に不安があったけれど、ちゃんと狙い通り、リンゴは遠目から見て立体的に仕上がった。

「やったね! ちゃんとリンゴに見える!」

「形もキープできてるな。成功だ!」

よかった……!

達成感というよりも安心で泣きそうになる。

「何あれ、リンゴじゃん」

「赤組すげーな」

他チームの驚きの声が嬉しい。

グラウンドにいる生徒たちが、リンゴをよく見ようとだんだん集まってくる。

応援合戦のパフォーマンス衣装であるハッピをまとった中山がやってきた。

「いいねぇ。うちのが一番目立ってんな」

「うん。団旗のポイントはもらったね」

「ああ、間違いないな」

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