先生の秘密
準備は着々と進んでいく。
明日の天気は快晴。
グラウンドにはチームごとにテントが張られ、完成したマスコットも台車に乗せられ所定の台に設置された。
我々赤チームのマスコットは団旗と同じ巨大なリンゴだ。
材料は竹と新聞紙。
シンプルな形なので他のチームと比べて一見地味なのだが、パフォーマンスに合わせて何やら仕掛けを仕込んだと聞いている。
砂のトラックに白線が引かれ、進行を担当する放送部がマイクのテストをしている。
すべての準備が完了したのは、午後4時頃だった。
このあとは各チームで集まって、決起集会を行う予定だ。
我々赤組の集会は剣道場で催される。
団長である中山が選んだのだろう。
「さくらー、行こう」
「うん」
茜とともに剣道場に入る。
この学園に入学して以来、剣道場には3~4回しか入ったことがなかった。
独特の雰囲気と空気、そしてにおいがする。
道場にはすでに下級生が学年ごとに集まっていて、すでに楽しそうに談笑が始まっていた。
赤組のクラスを担当する先生たち、そして淳一もいる。
私と茜はクラスメイトが集まるエリアに腰を下ろした。
予定の時刻。
赤組の団長である中山が前に立ち、マイクを握った。
下級生の女子たちから軽く歓声があがる。
中山は学年の垣根を越えて人気があるようだ。
赤色のハチマキとハッピもよく似合っているから、体育祭でまたファンが増えるのだろう。
あんな人に好きだと言われて悩むだなんて、私はとんでもない贅沢をしているのでは。
「えー、それでは赤組の決起集会を始めます!」