先生の秘密
「どうして? 前向きに考えるって言ってじゃん」
茜は心底納得いかない様子だ。
すべてを話してしまいたいけれど、それができないのが心苦しい。
とはいえ、全く理由を明かさないというのはあまりに申し訳ない。
私はほんの少しだけ、理由を明かすことにした。
「元カレと……ちょっとね」
まだ引きずっているのかと、呆れられるだろうな。
そう思っていたのだが、茜は凍りついたように険しい顔になった。
「ねぇ、さくら」
「なに?」
「その元カレのことなんだけど。そろそろちゃんと話してほしい」
軽いノリの恋バナとしてではなく、真剣に言っていることは、嫌でも伝わってきた。
だけど、淳一の立場がある。
いくら相手が茜でも、話すことはできない。
「……ごめん」
私が謝ると、茜はそれがわかっていたかのように軽く息をついた。
「あたし、少し前に気付いたの」
「え……」
まさか。
その先の言葉が予想できて、血の気が引いていく。
頭がキンと冷えたところで、茜は至極冷静にその名を告げた。
「おっくんだよね」
心当たりはある。
まだ彼と付き合っていた頃に、彼と一緒に撮ったプリクラの画像を送ったことがあるのだ。
ただし、親友である茜だけだ。
それ以降、たくさんの画像を送信し合っていたから、その画像はトーク画面の奥の奥にあるはずだし、画像の保管期限はとっくに切れている。
だけどその画像が残っている可能性があることは、認識していた。
「いつから気付いてたの?」
「夏の補習のとき。前にもらった画像を探してみたら、残ってて」
なるほど。
だから体育祭の準備のとき、茜は彼に冷たかったのだ。
「どうして画像を探してみようと思ったの?」
「中山くんが、見せてほしいって言ってきたから」