先生の秘密
気持ちがまた重くなる。
「中山くんも知ってるの? 私と彼のこと」
茜は無言で頷いた。
「そっか……」
どうしよう。
防ぎようがなかったとはいえ、私のせいで彼が私と付き合っていたことがバレてしまった。
ふたりが他人に言いふらすとは思っていないけれど、これでもう私の口さえ閉じておけばいい問題ではなくなった。
そのせいで淳一の立場を悪くしてしまったらと思うと、泣きたくなるほど申し訳ない。
「隠しててごめんね、茜」
「いいよ。悔しいとは思うけど、おっくんの立場を考えたら納得」
茜はそう言って表情を緩めてくれたけれど、「……でも」と言葉を続ける。
「中山くんは、画像を見る前から気付いてたみたい」
「……え?」
どうして?
私、彼にそんなこと打ち明けてない。
「さくらと彼の様子を見てたら、そんな気がしたって。だから私に画像が見たいんだって、言ってきたの」
中山とふたりでいる時、何度か淳一と居合わせた。
気持ちが揺さぶられて不審な行動を取っていたのは私だ。
頭のいい中山なら、そこから私たちの秘密にたどり着いたというのもわかる気がする。
やっぱり私のせいで、淳一は……。
流行の曲が流れる店内を見渡す。
同じ制服を着た生徒はいない。
私はできるだけ小さな声で、4月に淳一が学校に来てからのことをすべて話した。
再会した日に『なかったことにする』と言われたことも。
体育祭の前日に抱きしめられたことも。
茜はただ、「うんうん」と相槌だけを打って聞いてくれた。