先生の秘密
考えないようにしていたけれど、私と純一は恋というよりは未練で繋がっている。
純一が私への気持ちを手放してしまえば、つながりなど簡単になくなってしまう。
気持ちのつながりがなくなれば、私は完全に過去の女になるのだ。
私は淳一の言葉を都合のいい部分だけを、都合のいいように捉えていた。
そして自分ひとりで舞い上がって、幸せに浸って、茜の冷静な言葉で現実を知り、自分ひとりで勝手に傷ついている。
「気持ちの問題って一時的な自己満足だよ。自分を苦しめると思わない?」
茜の指摘はもっともだ。
「……思う。もうどう頑張っても、先生とは幸せになれる気がしない」
「だったら中山くんのこと、おっくんを理由に振らないであげて」
茜の提案に、私はもう黙って頷くしかなかった。
体育祭以来、淳一とは朝の挨拶以外で顔を合わせていない。
校舎内で見かけることすら、ほとんどない。
これが私たちの正しい距離感だ。
体育祭の準備期間で関わりすぎていたから、忘れていた。