先生の秘密

体育祭前の淳一の言葉を真に受けるなら、私たちはお互いを想い合っている。

だけど、教師と生徒だから付き合えない。

つまり、教師と生徒でなければ付き合いたい。

ということなのだと思っていた。

きっとこの認識に間違いはないけれど、私が彼を想っているのと同じだけ、彼も私を想っているとは限らないのでは。

未練はあるが、教師と生徒でなくても、付き合う気はない。

淳一がそう思っている可能性もある。

『今度こそ忘れよう。お互いに』

『俺よりいい男と、幸せになれ』

俺よりいい男というのが、暗に中山を指しているのはわかっている。

彼は私をちゃんと好いてくれているし、きっと大事にしてくれるだろう。

私だって、好きかどうかと聞かれたら、好きだと答える。

ただ、淳一のように燃え上がるような熱い恋心が湧き上がらないだけだ。

子供の幻想だと言われたらそれまでかもしれないけれど、恋愛ってそういう気持ちが大事なんじゃないかと思う。

そうでなくても成り立つ関係は、虚しいような気がするのだ。


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