先生の秘密
私と雄二がアメリカンな関係を始めた直後のこと。
生徒たちの間に、このような噂が流れ始めた。
「おっくんと中野先生が付き合っているらしい」
中野先生とは、淳一と共にこの学校にやってきた女教師、中野敦子先生のことだ。
担当は古典で、二年生の授業を担当している。
まあまあ美人で、メイクも毎日バッチリで、ほどよくいい香りがする。
童顔でほぼ生徒と変わらない淳一と違って、自らが大人であると全身でアピールするように、イイ女オーラを惜しげもなく放っているような女性だ。
生徒の誰かが塾の帰りに、淳一が中野先生の肩を抱いて歩くところを見た……というのが噂の発端らしい。
淳一に未練のある元カノの感情を抜いても、子供と大人が付き合っているみたいで、お似合いとは言えないと思う。
ただ、年齢は同じなのだから、可能性はおおいにある。
「気になる? 噂のこと」
雄二がニヤリと口角を上げて尋ねる。
「そりゃあ、元カノとしては気になるよ」
だけど、噂の真偽はどちらでもいい。
私が雄二と新しい関係を始めたように、淳一も誰かと新しい関係を始める。
そのことになんの不思議もない。