先生の秘密
再会したあの日に負った心の傷が疼く。
もう話しかけるなと。
私とのことはなかったことにすると。
彼はそう言ったことを悔いていると言った。
「彼女は生徒としてというより、古い知人として僕を助けてくれた。これで不自然な部分にもご納得いただけるのではないでしょうか」
理事長と校長、そして担任と中野先生。
沈黙がややあって、校長が口を開いた。
「納得はできました。当日何もなかったという証明には、なりませんが」
私にはもう、彼らが意地悪で淳一を追求しているようにしか見えない。
「本当に何もなかったのに……!」
だけど、それを証明できないのが悔しい。
私の言葉に、校長と理事長は気の毒そうな顔をした。
こんなことになるなら、淳一なんて見捨てて帰ればよかった。
苦しそうだったけれど、私が手伝ったりしなくても、淳一はひとりでどうにかできただろう。
淳一と再会した頃、あわよくばよりを戻したいなんて思っていた自分が恥ずかしい。
「椿はクラスの男子と交際していますし、学年では広く認知されています。過去はどうであれ、今奥田先生と……というのは考えにくいです」
雄二とのことを知っている担任がフォローをしてくれた。
「それにあの日、奥田先生は間違いなく高熱があったわけですから、そういう行為に至ったとも考えにくいと思います」
中野先生も、私たちを信じて応戦してくれた。
理事長が深く息をつく。
「わかりました。椿さんが傷つくようなことはなかったようですね」
よかった! 認めてくれた!
私たちがホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、理事長は淡々と付け加えた。
「しかし、奥田先生については多少考える必要があるようです」