先生の秘密



翌日。

私は学校に行かなかった。

具合が悪いと言って、何も知らない親に欠席の連絡してもらった。

そう。親は何も知らないのだ。

昨年神戸にいるときに彼氏がいたことも、距離を理由に切ない別れを迎えたことも。

春に学校で彼と再会し、昨日校長室に呼び出されたことも。

昨夜はほとんど眠れなかった。

そのせいで起き上がるのもだるいし、具合が悪いというのも半分本当だ。

学校には行きたくない。

淳一の処分を聞くのが怖い。

それに、あの写真を撮った人間、おそらく良識の欠如した生徒が学園内にいるのだ。

いつ裏アカに投稿されて画像が拡散されるかもわからない。

授業が始まる直前の時刻に、茜と雄二から「今日は休むの?」という旨のメッセージが来た。

二人に「うん」とだけ返し、それ以降に来たメッセージは読みもしなかった。

父と母が仕事に出かけて、家には私一人になった。

テレビを見たりスマホゲームをしたりしてみるが、何も面白く感じられない。

逆にストレスが感じられて、テレビを消し、スマートフォンを手放した。

家の中がしんと静かになる。

マンションの近隣住人の生活音、ごみ収集車の音、近くの幹線道路を通る車の音。

静寂は訪れない。

特に何もしないまま、時間はあっという間に過ぎていった。

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