先生の秘密
卒業式前日。
私は雄二と市内の観光地で高校生活最後のデートを楽しんでいた。
山下公園まで来たのは本当に久しぶりだ。
前に来たときと同じ大きな船が停まっている。
海面がキラキラして眩しい。
海辺にあるせいか、この公園は風が強くて、私の長い髪がめちゃくちゃに乱される。
「あははは、髪ボッサボサ」
「うるさい!」
デーティングという関係であるにもかかわらず、受験生だったということもあって、私たちはデートらしいデートはほとんどしていなかった。
お互いの受験が終わってようやくその時間が取れるようになったのだが、学校が別れてしまうのが寂しいのか、雄二は外を歩くより二人きりになりたがる。
そしてひとしきり私への愛情を表現し、卒業するまではと遅くなる前に私を帰すのだ。
「俺たち、これからどうする?」
海に向かい、みなとみらい方面の景色を眺めていた雄二が、穏やかな声でそう尋ねた。
これから。つまり、卒業してから。
今まではデーティングという微妙な関係を貫いてきた。
卒業したら毎日は会えなくなるし、お互いに新しい出会いがたくさんある。
曖昧なままでは、関係をキープするのは困難になるだろう。
今が白黒つける絶好のタイミングだということは、私もわかっていた。