先生の秘密



4月。

横浜では例年より少し早く桜が咲きはじめ、新生活に彩りが添えられた。

通い慣れた学舎で迎える、3回目の春。

椿(つばき)さくら、今日から高校3年生だ。

ツバキにサクラ。

まるでギャグのような樹木縛りの名前は、覚えてもらいやすいが密かなコンプレックスだったりもする。

新しいクラスメイトとはまだ会話が少ない。

私たちは列を成し、体育館に座って静かに始業式に参加していた。

校長の長い話に興味はない。

私は自分の長い髪の毛先をいじり、暇を潰す。

「それでは、新しく我が校に来られた先生を紹介します」

司会を勤める放送部の美しいアナウンスが聞こえ、顔を上げる。

壇上に上がったのは二人の若い男女だった。

うちの学校では、新任の教師が3年生の担当をすることは滅多にない。

だからあまり興味もなくて、チラリと雰囲気だけ見て、再び毛先をもてあそび暇を潰そうとした。


< 2 / 209 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop