先生の秘密
4月。
横浜では例年より少し早く桜が咲きはじめ、新生活に彩りが添えられた。
通い慣れた学舎で迎える、3回目の春。
椿(つばき)さくら、今日から高校3年生だ。
ツバキにサクラ。
まるでギャグのような樹木縛りの名前は、覚えてもらいやすいが密かなコンプレックスだったりもする。
新しいクラスメイトとはまだ会話が少ない。
私たちは列を成し、体育館に座って静かに始業式に参加していた。
校長の長い話に興味はない。
私は自分の長い髪の毛先をいじり、暇を潰す。
「それでは、新しく我が校に来られた先生を紹介します」
司会を勤める放送部の美しいアナウンスが聞こえ、顔を上げる。
壇上に上がったのは二人の若い男女だった。
うちの学校では、新任の教師が3年生の担当をすることは滅多にない。
だからあまり興味もなくて、チラリと雰囲気だけ見て、再び毛先をもてあそび暇を潰そうとした。