先生の秘密
この日の昼休みも、茜と喋りながら校庭の男たちによるバスケを見ていた。
私は興味ない風に携帯をいじりながら淳一をチラ見していたのだが、画面へと目を向けている間に何かと何かがぶつかる嫌な音がした。
「きゃあっ!」
茜や他の観戦していた女子たちが悲鳴をあげる。
視線を校庭に戻すと、人が一人、地面に寝転び痛がっている。
さっにの鈍い音はプレイ中に人同士が接触した音だった。
「拓也(たくや)!」
茜が声をあげ、立ち上がる。
怪我をしたのは茜の彼氏、拓也だ。
「私、行ってくる!」
茜が教室を飛び出す。
私も彼が心配で、彼女についていく。
校庭に出ると、拓也はプレイしていた男子たちと淳一に囲まれていた。
体を起こしてはいるが、よほど痛むのか、足を押さえている。
「拓也! 大丈夫?」
茜が駆け寄ると、拓也は照れた顔をする。
「茜! ちょ、なんで……!」
「倒れるんだもん。心配するに決まってんじゃん!」
茜が涙ぐみ、拓也は慌てたように茜の頭を撫で宥める。
「大袈裟だって……ああもう泣くなよ~」
かわいい彼女の登場に、周りも冷やかしの視線を向ける。
力になるかもしれないとついてきてはみたが邪魔になりそうなので、私は輪の外でひっそり彼らを見守ることにした。
淳一のことは見ないように努める。
「そろそろ立てるか?」
淳一が拓也に声をかける。
「まだちょっと無理っぽい。折れてはないと思うけど、本格的に捻った」
「冷やさないと長引くな。掴まれ」
淳一が拓也のわき腹を抱え、立ち上がらせる。
茜も拓也を支えている。
「保健室行ってくる。みんなは続けてろ。でもケガはすんなよー」
男子たちは頷き、見送る。
「さくら。俺の上着頼むわ」
「うん、わかった」
地面に放置されているブレザーの中から拓也の指差したものを取り、彼と茜、そして淳一を追う。
淳一の近くにいていいものかと迷っていたから、役割を与えられてよかったと思った。