先生の秘密
「おっくん、やっぱカッコいいな。見た目は若いけど、やっぱ大人っていうか、こういう時に頼りになるって素敵だね」
茜が私に同意を求めるような言い方をする。
淳一のカッコよさは、私がいちばんよく知っているつもりだ。
童顔で一見頼りなさそうに見えるけれど、案外気が強いし、冷静だし、甘いだけではない優しさを兼ね備えている。
「そんなこと言って、拓也が聞いたら泣くよ?」
私が同意せずに言うと、茜は首をかしげた。
「さくら、なんでそんなおっくんのこと嫌うの?」
「え?」
茜の言葉に驚いた。
私は興味のないふりをしてはいるけれど、嫌っているように見せているつもりはなかった。
「なんか、すごい関わるのを避けてる感じがしたけど」
「気のせいだよ。全然嫌いじゃないし」
むしろ、姿を見るだけで苦しくなるほどに焦がれている。
「そう?」
「ああでも、ああいうチャラそうなタイプは苦手、かな」
「ええ~、おっくん全然チャラくないけどなぁ」
茜は納得いかない顔をしながら、話題は拓也の怪我の話へと戻った。
拓也が倒れた瞬間、茜は一目散に拓也のもとに走った。
いくら淳一にキャーキャー言っても、やっぱり好きな人が大切なのだ。
素直に好きな人のもとへ走って行けるのが羨ましい。
拓也の荷物を保健室へ運ぶのは、茜ひとりに任せた。
その方が淳一にも都合がいいだろう。