先生の秘密
「私、感じ悪いかな」
「そういう意味じゃないよ。さくらは媚びないっていうか、キャピキャピ感がないじゃん? 顔立ちと話し方も落ち着いてて、高校生にしては大人っぽいんだよ」
茜にも淳一と似たようなことを言われてしまった。
私はそんなに大人びているのだろうか。
別に大人ぶっているわけじゃないし、達観しているわけでもない。
たしかにキャピキャピしたノリは苦手だけど、普通の高校生だ。
「老けてるってことね」
少しでも年相応に見せてみたくて頬を膨らませざまに言うと、茜があははと笑った。
「別にオバサンに見えるわけじゃないって」
「ならいいんだけど」
「さくらは高校生男子には高嶺の花なんだよ。去年、5歳年上の彼氏ができたって聞いて、納得だったもん」
5歳の年の差は、高校生にとって大きい。
淳一だって顔こそ幼いけれど、中身は立派に成人男性だ。
私に経験のないこともたくさん知っていた。
だから、淳一が私を好きだと言ってくれたとき、こんなに大人な男性が私を気に入ってくれたなんて奇跡だと思った。
私ももっと大人になって、彼にふさわしい女になりたいと思った。
だからはじめは、どんなことを話せばいいのかとか、どんな格好すればいいんだろうとか、すごく悩んだ。
淳一は頑張って背伸びしていた私の肩の力を、上手に抜いてくれていた。
私はきっと、見かけ倒しだ。
こんな私を愛してくれた彼は、きっとすごく懐が深い。