先生の秘密
「……ないでしょ、さすがに」
淳一の名誉にかけて、とりあえず同調はしないでおく。
昼間なのに彼との艶かしい記憶がよみがえって、変に胸が詰まった。
「あはは、だよねー。さすがにないか」
「ないよ。幼く見えるけど大人じゃん」
私は大人びて見られるし、淳一は幼く見られがちだ。
だから私たちが並んで歩いても、見た目には違和感がなかったかもしれない。
だけど中身は5歳も差があったから、私にはすごく大人に見えていた。
「ていうかおっくん、さくらの元カレと同い年くらい?」
不意にまた私の元カレの話になって、ギクリと肩が震えた。
「奥田先生って、いくつなの?」
知らないふりをしたのは、その方が自然だと思ったからだ。
「5月に誕生日が来て、23歳だって」
「ふーん。じゃあ同い年かも」
もう淳一の話題を切り上げたい。
私の気持ちをよそに、茜は彼の話を続ける。
「おっくん若いし生徒と距離が近いじゃん? ファンの子の中には、本気でおっくんのこと好きになっちゃってる女子もいるんだよね」
「えっ……」
こういう場合も、ライバルと表現していいのだろうか。
淳一が女子生徒をそのような目で見ることはないと理解してはいる。
だけど、昨年は私を好きになったくらいだし、万が一ということもある。
「さくらはその子らの希望の星だね」
「どういう意味?」
「だって、おっくん世代の男とJKもアリってこと、証明してるじゃん」
それは違う。
私は生徒だからという理由で思い出までなかったことにされ、絶望を証明した。
「教師と生徒はナシでしょ」
「秘密のラブの方が燃えるって」