先生の秘密
式典が終わり、私は後ろ髪を引かれる思いで体育館を後にした。
私が通っているこの私立高校は、男女共学の歴史ある進学校だ。
中学入試を経てこの学園に入り、今年で6年目になる。
最後の1年が今日から始まった。
私と奥田淳一が付き合っていたのは、昨年の夏のことだ。
夏は毎年仲のいい神戸の従姉の家に泊まり込みで遊びに行くのだが、今年は私が受験のため、昨年がラストチャンスだと、夏休みのほとんどを神戸で過ごした。
淳一とはその間に神戸で出会った。
すぐにお互いに惹かれ合い、恋人同士に。
夏の間、多くの時間を共に過ごした。
しかし横浜・神戸間の遠距離恋愛は難しいと、二人で決めて別れた。
私はまだ高校生だし、彼は教員採用試験中の大学4年生だった。
かたや来年は受験生、かたやどこに就職するかもわからない就活生。
恋愛関係を継続させるのが困難であることは明白だった。
納得して別れたものの、私は彼を忘れられないまま現在に至る。
だからこそ、私の心は浮き足立っている。
淳一は私の通っている学校の名前なんて知らないはずだ。
それなのに、彼が私の通う学校に赴任してくるとは、なんて運命的なのだろう。
神様が私に再びチャンスをくれたとしか思えない。