先生の秘密
もしかしたら中山は、年上の女の人を好きになったのかもしれない。
そう思った私は、もっと何か彼の恋を応援できるような情報がないかと記憶を探る。
「有名なところに出掛けたり、どこかで一緒にご飯を食べたり、家でまったりしたり……普通だったと思うな」
相手が自分より大人だからといって、何か特別なことをしていたわけではないと思う。
「そうなんだ」
「運転しないときはお酒飲むし、タバコも吸うけど、私がまだ未成年だから気を使ってくれてたと思う」
全然役に立つようなことが言えない。
淳一と付き合っていたのはたったの1ヶ月だ。
一緒にいられる限られた時間を必死に過ごしただけで、倦怠期のような試練もなかった。
改めて、本当に短い付き合いだったのだと思い知らされる。
「今でもその彼氏のこと好き?」
中山が見透かしたように尋ねる。
「……うん。振られちゃったけどね」
私が答えると、彼は少しだけガッカリしたような顔になった。
年上の人とは望みがないという印象を与えてしまったのだろうか。
「椿さんは、次の彼氏も年上の人がいい?」
「別に、こだわりはないよ」
淳一を忘れられるくらい好きになれる人なら、年齢なんて関係ない。
「じゃあ、俺にもチャンスあるかな」
「あるよ! 大丈夫、頑張ってね!」
中山は見た目もいいし、頭もいい。
性格だって温厚だ。
自分が年下でも自信を持ってほしいという気持ちを込めてそう告げた。
しかし中山は、きょとんとした顔で首をかしげた。
「椿さん、なにか勘違いしてない?」
「え?」