先生の秘密
反射的に手を引っ込めようとしたが、中山は私の手を強く握ったまま放さなかった。
手を握られたままドアに視線を移す。
次の瞬間、私は自分の間の悪さを呪った。
ドアを開けたのは淳一だったのだ。
こんな状況で、目と目がしっかり合う。
私は今、いったいどんな顔をしているのだろう。
淳一は、この状況をどう思っただろう。
中山に嫉妬してほしいとまでは言わない。
だけどせめて、教師らしくこの状況を仕切り直してくれる言葉をかけてくれないだろうか。
期待を込め、彼から目を逸らさなかった。
しかし私の期待は、一瞬で打ち砕かれることとなる。
「おっと、邪魔したな。わりぃ」
淳一は笑ってそう告げ、教室の扉を閉めてしまった。
その瞬間、心が壊れたのではないかと思うほど、胸が強く痛みだす。
足音が遠退いていく。