先生の秘密



始業式の日は、学校が午前中で終わる。

生徒は帰ったり部活に行ったりするが、教師はきっとまだ帰らない。

「一緒に帰ろう」という友達の誘いを今日は断り、教室で人気がなくなるまで、携帯をいじりながら時間を潰す。

15分後、教室に私一人になったところで行動に出る。

静かに教室を出て、職員室へと向かう。

途中でトイレに入り、髪を整え、艶の出るリップクリームを塗った。

久々に会うのだ。少しでもキレイにしていたい。

気合いを入れ直し、いったん深呼吸。

緊張で鼓動が高鳴り、息苦しい。

気持ちを落ち着け、再び歩き始めた。

職員室が近づくほど鼓動が激しくなっていく。

気が急いているのか、歩みがだんだん速くなる。

緊張する。

やっぱりやめようか。

迷いが生まれるが、自分がこの学校にいるということを知ってほしい気持ちの方が大きく勝る。

だって、もしかしたらまた淳一とやり直せるかもしれない。

教師と生徒という立場上の壁はある。

私が卒業するまでは、学校にも友達にも秘密にしなければならないだろう。

だけどそんなの、好き合っていても別れなければならなかったことを思えば、なんてことない。

まるで少女マンガのヒロインにでもなったような気持ちだ。



本日、職員室は生徒立ち入り禁止になっていた。

明日行われる春休み明けのテストの問題を製作しているからだ。

私は規則に従い、ドアを開け、扉の外側から近くにいた男性教師に声をかける。

「すみません。新任の奥田先生とお話したいんですけど、呼んでいただけませんか?」


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