先生の秘密
淳一が人気なのは、まだ若くて年が近く、童顔なのもあって、生徒が自分と近い存在だと感じるからだと思っていた。
明るくてノリもいいし、元カノである私が言うのもなんだけれど、見た目もカッコいい。
つまり、見た目に起因していると思っていたのだ。
だけどそうではなかった。
淳一が人気なのは、見た目もさることながら、教師として尊敬できる人間性を持ち、自分たちの気持ちを尊重しながら正しい道へと導いてくれると信じられる、魅力的な教師だからだ。
私は教師としての淳一をナメていた。
「それにしても奥田先生。先生はどうしてここに? 祭りの会場からは少し離れてますけど」
会話が途切れたところで、そう尋ねたのは中山だった。
そう言われてみれば、淳一はなぜこんなところにいるのだろう。
「あー……」
淳一は言いにくそうに苦笑いを浮かべ、次の瞬間、視線を私に向けた。
ほんの少しだけ目が合うが、すぐに逸れる。
「会場の喫煙所でタバコ吸ってたら、他の学校の先生に高校生と間違われて補導されて……ここなら補導されずに吸えると思って」
この回答に、男子三人が爆笑する。
「あっはははは!」
「笑うな!」
「補導員って腕に書いてあるのに!」
ねぇ、それ、本当?
私がデートしてるのを見つけて、気になってついてきたのでは?
……なんて考えてしまうのは、あまりに自意識過剰だろうか。
私はそんなことを考えながら、一応みんなに合わせてなんとなく笑っておく。