先生の秘密
そのあと、淳一はコンビニで私たちに1本ずつ飲み物を買ってくれた。
同級生ふたりは、淳一に礼を述べて祭り会場へと去った。
他の利用客も多少出入りしているが、この場には私と中山、そして淳一の三人になってしまった。
……気まずい。
そう思っているのは私だけだろうか。
今日は中山とのことを前向きに考えるためのデートにするはずだった。
それなのに、その最中に淳一が現れてしまった。
これではダメだと思いながら、不可抗力的に淳一のことばかり気になってしまう。
昨年の思い出も、より鮮明に思い出せてしまう。
「先生、言うことカッコいいっすね」
とうとう中山も“おっくんマジック”にかかってしまったようだ。
茜や拓也、校庭バスケのメンバーのような、淳一を慕っている生徒の顔になっている。
「だろ?」
「自分で言うと半減しますよ?」
「マジか。じゃあ今の取り消すわ」
「はは、今さらですね」
淳一を忘れたい。
新しい恋をしたい。
果たして私は、淳一がいる学校でそれができるだろうか。
教室にふたりでいるのを見られただけで動揺したのに。
ふたりで下校しているのを見られただけで、中山に罪悪感を覚えたのに。
デート中に出くわしただけで、自分の気持ちを思い知らされてこんなにも苦しいのに。