先生の秘密
同級生ふたりと淳一のいなくなったコンビニ前は、ずいぶん静かになった。
あんな会話を聞かされた後で気まずいが、私は中山とまじめに向き合わなければならない。
「椿さん」
「はい」
中山はどこかスッキリしたような、落ち着いた表情をしている。
いつも何に対しても一生懸命でまっすぐな彼は、心身ともに強く逞しく、そしてとても聡明だ。
「好きです。俺と付き合ってください」
自分の気持ちを堂々と口に出せるのは、自信と勇気があるから。
ここでイエスと答えれば、彼はきっと私を大事にしてくれる。
だけど同時に、淳一の言葉に期待することも、淳一との恋を思い出してときめくことも許されなくなる。
こんなにも好意を伝えてくれているのに、応えてあげられなくて申し訳ない。
いつまでもウジウジしている自分を情けなく思うけれど、自分の意思ではどうしようもない。
いっそのこと、ここでノーと言って中山を拒否した方が彼のためになるような気さえする。
「中山くん、私……どうしたらいい?」
声が震えた。
視界の中山が歪んで滲む。