先生の秘密
夏の講習は、普段の授業よりも1時間くらい早く終わる。
ひとりで学校を出たが、まだ明るいし、世間は夏休み。
まっすぐ家に帰るのも癪だ。
とはいえ、ひとりでやりたいことも特にない。
いろいろと考えた結果、私は少し寄り道をして、市立図書館で講習の宿題を片付けることにした。
涼しくて静かな環境は、受験生にとってありがたい。
道中にある図書館の最寄り駅で下車し、徒歩3分。
ドアを開けた瞬間、涼しい空気に包まれる。
たかが3分でも、夏の日差しは厳しい。
エアコンの聞いた部屋は天国も同然だ。
デスクスペースの空いている席に着き、テキストを開く。
ここからはとにかく集中。
静かに課題に取り掛かった。
数学、化学、物理、地理。
現代文、古文、そして英語。
もうずっと前から、宿題を得意な科目順に片付けるのが癖になっている。
一番の苦手科目は英語だ。
淳一の担当科目である。
だから昨年は、淳一が英語の宿題を手伝ってくれることもあった。