先生の秘密
「ねぇ、じゅん。ここわかんない」
「ああ、これな。簡単やん。中学生でもできるわ」
「嘘だよ。解答見ても、解答の意味がわかんないし」
「時と条件を表す副詞節には、未来系のwillは使わへんてやつか?」
淳一はまさに解答に記載されている通りの言葉を述べたが、その言葉の意味がよくわからないから困っているのだ。
「時と条件を表す……副詞、節?」
「なるほど、そこからわからんか」
淳一は先生らしく細かく教えてくれた。
副詞とは何か。節とは何か。
他にも、文法用語を全体的に。
今英語の解答を読んで意味がわかるのは、昨年の淳一のおかげである。
「やばい。また思い出してボーッとしてた」
問題を解く手が止まっていることに気付き、小声で自分に喝を入れて再度課題へ取り組む。
一年前の今頃は……。
夏という季節のせいだろうか。
ふとした刺激やフレーズから、すぐに淳一を思い出してしまう。
思い出して、噛み締めて。
また思い出しては噛み締めて。
そんなことばかりを繰り返していたら、英語の課題が終わる前に閉館のアナウンスが流れた。