先生の秘密
再会して以来、学校の外でふたりで会うのは初めてだ。
私服は祭りの日のものより砕けていて、今日ここにいるのは完全にプライベートだということがわかる。
「なんや、おったんか」
「いたら悪いですか? ていうか喋り方戻ってますけど」
「休みの日くらい母国語で話さして。さくらも敬語やめ。気持ち悪い」
「なにそれ超自己中」
言われたとおり、敬語をやめる。
完全に元カレ・元カノのノリになっている。
先生と生徒という関係でやっていくと言ったのは自分のくせに。
こっちの言葉や先生モードは疲れるのかもしれないが、淳一の都合で切り替えなければならない私はもっと疲れる。
「何しとったん? 勉強?」
「うん。夏期講習の宿題。じゅんは?」
「読書」
「意外。何読んでんの?」
「意外てなんや。英語の本やぞ。知的やろ?」
「自分で言うとバカっぽい」
「まじか。取り消すわ」
4月にあんなに突っぱねられたのに、昨年と同じ調子で会話ができているのが不思議だ。
内心嬉しいが、悔しいから表には出さない。