先生の秘密
私はしばらく呆然と立ち尽くした。
プライベートの淳一に偶然出会って、先生と生徒ではない距離感で喋って、バイクで送ってもらって、浮かれていたのだと思い知らされる。
『あいつ、ええんちゃうかな』
彼は、私に中山と付き合うことを推奨した。
中山とのことを前向きに考えているといっても、私の心の中には淳一への思いが残っている。
別れの日、淳一はまた私を好きになると言った。
祭りの日、未練のようなものを見せた。
今日はここまで送ってくれた。
いつもいつも、期待させて突き落として、何なの。
私の気持ちを何だと思ってるの。
私がどんな思いで学校に通っていると思ってるの。
腹立たしさのあまり涙が出る。
奥歯を噛み締めた鈍い音が胸の奥まで響いた。
淳一を好きな気持ちなんて、今すぐ吐き出して捨ててしまいたい。
真摯に私を好きだと言ってくれる中山を好きになりたい。
言葉にするのは簡単なのに、どうして実行できないのだろう。
教師の仮面を脱いだ素の淳一の言葉は、どこまでも私の心の傷をえぐる。
あいつは本当にひどい男だ。