先生の秘密
夏休みの特別講習も今日で終わる。
最後という意識があるからか、授業をする方にも受ける方にも気合いが入っているような気がする。
私はといえば、先日淳一との思い出を捨てて以来、勉強に集中している。
余計なことを考えてモヤモヤするよりも、受験のためにエネルギーを使いたかった。
「さくら、ずっと気合い入ってたね」
講習が終わり帰宅の用意をしていると、長い講習に疲れた茜が席へとやってきた。
私の些細な変化に気づくなんて、さすがは親友である。
だけど、肯定するのはなんとなく恥ずかしい。
「そうかな?」
「そうだって。さくらだけ目付きが違ったもん。何かあった?」
頭には図書館で偶然会ったことやバイクで送ってもらったこと、そしてその後に言われた言葉がよみがえる。
淳一とのことは話せない。
……けどもういっそのこと、全部ぶちまけてしまおうか。
「元カレとの思い出の品々を全部捨てたんだ。だから心がスッキリして、勉強に集中できたのかも」
意気地のない私には、やっぱり無理だった。
淳一とのことは、いくら茜でも話せない。
茜は一瞬真面目な顔をしたけれど、すぐに笑顔に戻った。
「中山くんとはどうなってんの?」