先生の秘密

「俺、夏休みは部活ばっかだったから、時間があるって変な感じがするな」

中山は昨年の今ごろ、剣道部の新キャプテンとして忙しくしていたことだろう。

顧問の萩原先生は部員の成績についても厳しいようだったから、夏休みも文武両道で頑張っていたに違いない。

「私は去年まで夏休みは遊んでたから、講習がある今の方が変な感じだよ」

「へぇ、そうなんだ。具体的に何して遊んだの?」

淳一と過ごした昨年の夏の記憶がよみがえる。

具体的に、恋愛をしていたとは言えない。

「私、毎年夏休みは神戸の従姉の家にお世話になるの。その従姉がふたつ年上なんだけど、いろんなところに連れ出してくれるんだ」

そして昨年、彼女と訪れた場所で淳一と出会った。

「へぇ、いいな神戸。夏の間、ずっといたの?」

「うん。今年は受験だから、行けないけどね」

中山は昨年の夏に私に彼氏がいたことを知っている。

察しのいい彼は、その彼氏が神戸の男性だと気づいているかもしれない。

私たちは小腹を埋めるべく、近くのファストフード店に入った。

照りつける日差しとやかましいセミの鳴き声から逃れ、快適な店内で各々好きなものを注文する。

店のテーブルが小さくて、席に着くと中山との距離が近い。

整った顔と綺麗な肌に、ドキッとした。

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