先生の秘密
次の瞬間、中山と目が合った。
「椿さんって、美人だよね」
彼はふと微笑み、紙コップ片手にサラッとそう告げた。
私も彼をキレイだと思って眺めてしまっていたから、心を読まれたような気がしてビックリした。
それに、美人だなんて女子同士のお世辞以外で言われたことがない。
「ぜ、全然! そんなことないでしょ」
中山は私の顔を愛しげに見つめながら続ける。
「俺はずっと思ってたよ? 椿さんって、学校ではスッピンだし、目立つ顔ではないけど、目立たないのは地味だからじゃなくて、整ってて粗がないからだよね」
顔の温度が上がってきた。
きっと真っ赤になっているに違いない。
本当に、私は美人なんかじゃない。
そうなりたいと思ってはいるけれど、何をしていいかわからない。
自分を美しいと思えたらさぞかし楽しく生きられるだろうと思う。
「もう、やめてよ。どうしたの急に」
「ああ俺、椿さんが好きだなって思って」
「なっ……!」
強制的に胸をキュンとさせられた感覚がする。
彼は自分に自信があるから、こういう言葉を簡単に言えてしまうのかもしれない。
褒められ慣れない私だけが照れているし、恥ずかしがってばかりでうまく返せない自分が恥ずかしい。
「だから、早く俺と付き合ってほしいな」
「それはっ……」
「元カレに未練があってもいい。あとは俺ががんばる。だから、とりあえず俺が椿さんを独占する権利、くれないかな」