一夜の物語
「夜鬼……。」


夜鬼は自分に与えられた名を呟いた。


「夜鬼、夜鬼。」


また何度も何度も呟いている。

そして、ぱっと笑みを浮かべた。


「ありがとう。これからそう名乗るよ。」


月明かりに照らされた綺麗な笑顔。


私は顔を背けた。


「なっ名乗る相手なんかいないくせに。」


「葉月はキツいな。」


「五月蝿い。」
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