一夜の物語
「急に止まらないでよ。」


「……悪い。なぁ、寄り道するか?」


夜鬼が振り返って言う。


「寄り道?」


「都合悪いか?」


いや、帰りたくないって言ったのは私だし都合なんてないけど……。


「大丈夫だよ?」


「そうか。見せたいものがある。」


夜鬼が一瞬子供のような笑顔を見せた。
私も一瞬だけドキッとする。


次の瞬間、夜鬼は私をすばやく抱き上げた。

体がうく変な感覚。

いや、その前に恥ずかしいっ。

「ちょっ。……ってひゃぁぁっ!」

文句を言おうとするがそれより先に夜鬼は軽やかにジャンプ。


普通の高さじゃないっ。


それは高く高く。


夜鬼は近くの木の枝に優雅にとまった。

「怖かった?」


怖いとか言ったら負けたみたいで悔しい。


本当はこわいのに私は強がってしまった。


「これくらい……平気だから。むしろ楽しいし。」
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