一夜の物語
「引き上げるぞ。」

せぇのと夜鬼は腹筋をつかって私をつかんだまま起き上がる。


私はやっと夜鬼の隣に座れた。


「夜鬼凄いね。」

「まぁな。それよりあれ、見ろよ。」


夜鬼は一点を指さす。

私もその先をみた。

そして……感動した。


「あ……あ……。」

「『あ』じゃわかんねぇよ。」


「綺麗。」


立っていたら木の葉に隠れてそれは見えなかった。

こんな高いとこで、座ってこそ見れる景色。

「月がおっきいよ。」


私が見た光景は手でとれてしまうほど近く大きく見える月とミニュチュアみたいに小さくなった私の住む町だった。
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