一夜の物語
「や……き?」

私は夜鬼の顔を見上げた。

前までの意地悪な表情はなく優しい笑顔で私を見ていた。

「大丈夫だ。今日は特別に俺の胸で泣くことを許す。」


なにそれ。

私は可笑しくて頬が緩む。

けど……それと同時に涙腺も緩んだ。

あぁ、もう駄目だ。
「っひっく、うっく……。うっうー……。」

私は夜鬼の胸に顔を埋めた。

そして優しい鬼の言葉に甘えて、思いっきり泣いた。

夜鬼はただ黙って、私を強く抱き締めてくれていた。
< 29 / 80 >

この作品をシェア

pagetop