一夜の物語
「葉月、一緒に来るか?」

夜鬼は私の頭を撫でた。

「俺と、ずっとここにいるか?」


私は……どんな表情をしていたんだろう。

多分目を丸くして、顔を真っ赤にさせていたんだろうな。

ただ、夜鬼の言葉が嬉しかった。

「私……。側にいていいの?」

夜鬼は哀しげに笑った。

「俺もこの百年の間ずっと一人だ。もう、麻痺して寂しいとは考えなかったが……。」

いったん言葉を切って夜鬼は何かを思い、顔をしかめた。

「だめだ。葉月がいなくなったら俺は……寂しいな。」
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