一夜の物語
「ちょっと待ってな。用事があったんだ。」
暫くして、彼はそう言うなり立ち上がった。
「どこいくの?」
「山菜をとりにいく。家族ができたからな。」
夜鬼は苦笑した。
うわぁぁ。
そう言われると照れるよ。
家から出ようとする夜鬼。
「夜鬼……。」
そんな彼を呼び止めた。
「ん?」
と、彼は振り返る。
私は自分にできるだけの笑顔をむけた。
「はやく……はやく帰ってきてね。」
夜鬼は一瞬、驚いたような表情をみせた。
そしてすぐに笑う。
「ああ……。すぐに……帰るよ。」
その言葉が凄く嬉しかった。