一夜の物語
「ねっ猫じゃないっからっ。」


「どうだか。」


私を抱き上げたことで、夜鬼は歩くスピードをさらにあげた。


それは夜鬼が、何か急いてるようにも見える。


「一体、何を急いでいるの?」

聞いてみた。

しかしその問いには彼が答えることはなかった。

私は暗くて見えないけど、そこにあるはずの夜鬼の顔の空間をじっとただ見ていた。


見ているしかなかった。
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