一夜の物語
ドクン


ドクン


どくんっ。


心臓が自己主張でもするように強く、強くなる。


目の前には……





ぶらーんと体が揺れていて


その顔には血の気がない。


何か恐ろしいものでも見たかのように


カッと目を開けて


私を見ていた。


胸にはブラックホールでもあるんじゃないかと思うほどの大きな穴が開いていて……


そこにあるはずの内蔵がない。


体を伝う赤黒い血は

やがて下に落ち、こちらに落ちてくる。

そして私の顔にポタッ。


そのとき私は我に返った。


自分の体をみる。


私の足元は赤い水溜まりにつかっていて

まるで私が殺ってしまったかのように



私の身体中は……



赤・赤・赤・赤・赤
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