一夜の物語
私は逃げようと走りだした。


夜鬼の横をぬけ、出口へと向かう。


「逃がさない。」


すぐに行く道を塞がれ抱き上げられる。

大好きだったあの彼の温もりが、今ではとても冷たく感じる。


大好きだった、この力強さが今ではまるで私の死を告げているようで…


いや……いや……


「いやっ。私っ死にたくないっ。」


この山に来たばかりのときと全く逆のことを私は叫んでいた。


例え、彼に裏切られても、一度うまれてしまった生への希望は捨てられない。


生きたいよ。
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