カシスオレンジと波の音
「ど~したの??沙穂、ああいうタイプ苦手だっけ?」
「合コン行ってもいつも沙穂はみんなと好み違うもんね」
確かにそう。
私は合コンでも必ず一番人気ではない男の子をかっこいいと言う。
「完璧すぎてちょっと苦手かなぁ……」
あいまいにそう答えて、私はおじさんの方へと歩いた。
「何か手伝いましょうか?」
声をかけてしまった。
どうしてだかわからないけれど……
さっき食堂で見た写真のような笑顔を見たいと思ったのかも知れない。
汗に濡れた背中。
真っ黒な肌。
無精ひげも汗で濡れている。
私が今まで出会った男の子とは全く違う世界の人って感じがする。
とにかく、大人。
「あ…… さっきのうるさいガキか」
顔を上げたおじさんは、私の顔を見てそう言った。
ここに千佳がいたら、おじさんをひっぱたいていただろう。