カシスオレンジと波の音
ひたすらに肉を焼いて、みんなに配っていた。
ニコリともせずに。
「食べないんですか?」
私が声をかけると、おじさんは眉間にしわを寄せてこっちを見た。
「あぁ?あ、さっきのガキか」
「ガキじゃないです」
「ガキだと思ったらやっぱりガキだったな。未成年だろ?」
おじさんは、私が手に持っていた紙皿の上に大きな肉を乗せた。
「未成年だけど、来年で20歳だし…… これ、食べたら?」
私、何考えてるんだろう。
お箸でつまんだお肉を、おじさんの口の前へと持って行った。
左手で生肉ののったお皿を持って、右手で肉をひっくり返しているおじさんは両手がふさがっていた。
「いらねーよ」
「食べなきゃお腹減るでしょ?」
私はむくれた顔をしたおじさんの口に肉を押し込んだ。