カシスオレンジと波の音



「おじさんって言ったな?」



肉を飲み込んだおじさんは、また肉をひっくり返した。



「だっておじさんじゃん。でも20代なんでしょ?」



「まだ27だし。ここに来てから35歳くらいに見られるけどな」




また笑った。

笑っていればいいのに。


すごく優しい顔するのに。



「うっそだーーー!絶対年齢ごまかしてるでしょ?」



「嘘じゃねぇよ。ばか!!」




私のお皿にまた肉を乗せた。




「俺のズボンの後ろのポケットに財布入ってるからちょっと取って。免許証あるから証明してやる」




この人、心を開くのに時間がかかる人なんだ。


実はとても面白くて優しい人なのに、照れくさくて、それを隠してしまうんだ。



私はおじさんのポケットから財布を出し、言われるままに、免許証を出した。





< 23 / 69 >

この作品をシェア

pagetop