カシスオレンジと波の音
「お肉、いる?」
私は、また佐倉さんの口へと肉を押し込んだ。
「今、俺の返事聞く前に突っ込んだだろ!!」
さっきまでとは全然違う。
怖い人じゃない。
誤解されやすいだけ。
すっごく温かくて、優しい人。
ちょっと不器用なだけなんだ。
「ほら、ガキが迎えに来たぞ」
佐倉さんの視線の先には、千佳と明日香がいた。
「友達の前でガキなんて言ったら殴られるよ」
「殴れるもんなら殴ってみろ」
千佳が大声で私の名前を呼んだ。
「沙穂――――!!お待たせ」
私は、千佳と明日香のいるところまで走った。
ドキドキする。
何だろう。
お酒なんて飲んでいないのに酔っ払ったみたいな感覚。