カシスオレンジと波の音
恋の病
「花火行こっか。どしたの?沙穂、元気ないよ」
「うん。どうしたんだろう。胸が……苦しい」
私は、海岸へ歩く道の途中、ずっと胸を押さえていた。
「それって恋じゃない?沙穂、恋しちゃったんだよ!!」
「まじで?でも誰に??まさかあんなこと言って、俊吾??」
私を挟んで、テンションの高い2人。
さっきから俊吾の話ばかり。
大介とたかちゃんは、何人の女の子を俊吾に奪われたんだろう。
ひと夏の恋を求める女の子にとっては、やっぱりあのルックスは魅力的。
「まさか、たかちゃん?沙穂はいつも人と違う好みだから」
「大介は絶対ないよね。沙穂はかわいいタイプは苦手なはず」
言えない。
佐倉さんだなんて。
言えない。
2人がどんなにびっくりするか、想像しただけでも怖い。