カシスオレンジと波の音
首をぶんぶんと横に振って、佐倉さんの顔を消そうと思ったけど、私の頭の中から消えることはなかった。
さっき一瞬だけ見せたあの笑顔。
耳に残るのは、照れたような笑い声。
今まで出会ったことのない大人の男性。
花火には来ないのかな。
一緒に花火したかったのに。
こんなことを考えてしまう私は、もう自分で認めるしかないくらいに佐倉さんに恋をしていた。
恋、恋??
これが?
顔が特別タイプってわけじゃないし、恋人になんてなれるわけない人なのに。
恋ってそういうこと関係なく、いきなりやってくるんだね。
いくら条件が整っていても、心が動かないこともある。
逆に、こんな風にいきなりときめいちゃうこともある。