カシスオレンジと波の音
残り少ない花火。
最後は絶対に線香花火だよね。
波の音に耳を澄まし、目を閉じる。
ここにいない佐倉さんを想う。
「絶対に海にゴミ捨てんなよ!!このバケツに捨てろ!」
……今の声!!!!
「あ!!!!」
大声を上げてしまった。
振り向くと、そこには大きなバケツを二つ持った佐倉さんが立っていた。
頭に白いタオルを巻いて。
来てくれた。
最後の線香花火、一緒にできる。
そう思ったのに、佐倉さんはバケツを置くとペンションの方へ歩き出した。
「ちょっと!!!」
私はとっさに走り出し、佐倉さんの腕を掴んだ。