カシスオレンジと波の音
「またお前か。何だよ」
私の顔を見るなり、眉をひそめた。
「線香花火、一緒にやろうよ。せっかく来たんだから」
俊吾は、みんなに線香花火を配っていた。
「二つちょうだい!」
私は俊吾から線香花火を二つもらい、一つを佐倉さんに無理やり持たせた。
「うぜーガキ……」
そう言いながらもまんざらでもない顔をしていた。
ポケットからライターを出した。
「ほら」
「ありがと」
みんなの輪から少し離れた場所で、向かい合って、線香花火をした。
私は、花火なんて見てなくて……
ずっと佐倉さんの顔を見ていた。
溢れる気持ち。
どうしようもなく、ドキドキする。
「いつも花火、参加しないの?」
「ああ、俺は裏方だから」
なかなか落ちない線香花火。