カシスオレンジと波の音



出会った時の、あのぶっきらぼうな佐倉さんはどこへ行ったんだろうって思うくらいの面白さと優しさ。



いつの間にか、千佳は椅子を移動させて、佐倉さんの隣に座っていた。




「おじさん、怖いと思ってたぁ」



甘えるような声で佐倉さんに話す千佳。


胸が痛んだ。



千佳、まさか佐倉さんに惚れちゃったりしないよね?



千佳は、バイトの先輩でかなり年上の人を好きになった経験ありだから、心配。




佐倉さんの隣を離れたくなかった。


でも、ジュースばかり飲んで、トイレへ行きたくなった。




「千佳、トイレ行かない?」


「え~!私、まだ大丈夫」



珍しく千佳がトイレの誘いを断った。


「ガキだな、お前は。一人で行けねぇのか?」




佐倉さんは、立ち上がった私を見上げて、優しい顔で笑った。




「ガキじゃないもん。一人で行くもん」



両手をぶんぶんと振りながら、トイレへと急いだ。



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