カシスオレンジと波の音




食堂へ連れて行かれた。



「お前も何か飲む?」



「カシスオレンジ!」




私はそう答えた後、佐倉さんの怒った顔に気付いた。




「嘘だってば!アルコール抜きの飲み物作れる?」



私は、食堂の椅子に腰掛けたまま、椅子を移動させた。


佐倉さんのすぐそばに座り、カクテルを作る横顔を見つめた。




「カシスオレンジのアルコール抜きなんてまずそうだけど……作ってやろうか?」




甘い匂いが漂う。


大きな業務用の冷蔵庫が、時々大きな音を立てて、私をドキッとさせた。



「どう?」



子供用ノンアルコールカシスオレンジは、甘くて、不思議な味。


佐倉さんは、炭酸を足してくれた。




「うん。これなら美味しいよ!!飲む?」



「ガキの飲み物はいらねぇよ」



「佐倉さんだって、お酒弱いくせに。来年だったら、私の方が絶対お酒強いはずだよ」



来年。


来年、未成年じゃなくなった私は、佐倉さんに会うことはできないのかな。





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